第16章 運命とガラスの靴
ジェイドは、最近読んだ小説の一節を思い出していた。
“ 何も罪を犯さないなど、しょせん無理な話だ。
ならば、せめて、それを隠しておく事を 私達は誠実と呼ぶ事にした。”
その解釈に則って考えるならば、彼はなんて…
誠実なのだろう。
「ローズさんの、勘違いです。
オクタヴィネルは、貴女の許嫁でもあるフィリップ王子がいる 同盟国ですよ。
そんな我々が、ディアソムニア城を襲うなど…。絶対に有り得ない話です」
ジェイドは、ローズから一切 瞳を逸らす事なく言い切った。
『…そう』
ローズは彼と対照的に、相手から目線を外すように顔を背けた。そんな彼女の顎先をそっとすくって、自分と無理矢理に顔を向き合わせるジェイド。
そしてゆっくりと…
彼女の唇に、自らの唇を落とした。柔らかくも弾力のある唇の感触だ。
「……触れるだけの口付けで、そんなふうに頬を染めるなんて。
貴女のその態度は、男を期待させてしまいますよ」
林檎のように真っ赤になったローズを見下げ、からかうジェイド。
『仕方、ないでしょ。だって私…貴方としか、口付けした事なくて慣れてな』
まだ喋っている最中のその唇の隙間に、ジェイドは舌先を潜り込ませる。
緊張からか、力の入っているローズの舌を絡め取る。
『ん、…ぅ、』
流れ込んでくるジェイドの唾液を、喉を鳴らして飲み下す。それでも口から溢れ出てしまう透明な液体は、ローズの口元から つぅとこぼれ落ちた。
だんだんと力の抜けてきたタイミングを見計らい、ジェイドはローズの下半身へと手を伸ばす。スカートの中へ侵入し、温かな内太腿を撫でる。
ローズは、両手でジェイドの服をギュッと掴んでいた。