第16章 運命とガラスの靴
いくら仕方が無いとはいえ、男の隣でこうも平然と眠ろうとしている。多少なりでも緊張のせいで、睡魔もなかなかやって来ない。というのが一般的な乙女の反応なのでは?
いかに、ジェイドの事を異性として意識していないか。それをまざまざと見せ付けられたようで、彼は苛立ちを覚えた。
『それに…ジェイドが私にキスをするのは…いつも、理由があるもの』
1度目は、ローズに魔法薬を飲ませる為。そして2度目は、ローズに向けられた王子の恋愛フラグをへし折る為だ。
『もし、いま隣に寝ているのがジェイドじゃなくてフロイドだったら…もう少し警戒したかも』
「!!」
そう言った彼女の顔を見つめる。
もう半分くらいは夢心地なのか、瞳は完全に閉じられており 長い睫毛が伏せられている。形の綺麗な唇は、紅を引いているのではないかというくらいに赤く色付いていた。
ジェイドの中で、彼女と交わした2度のキスがフラッシュバックする。同時に、フロイドと比べられた事が遺憾だった。しかも 自分よりもフロイドの方が 男として意識されているという事実を突きつけられた事で…
ジェイドの心は、揺れ動く。
『……ん、?』
あと少しで、眠りに落ちそうになっていたローズは 自分の体の上に気配を感じて目を開ける。
そこには、案の定 ジェイドの身体があった。
『…どういうつもり?』
ローズに馬乗りになったジェイド。横につく腕が ギシリとベットを軋ませる。