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眠り姫の物語【ツイステ】

第16章 運命とガラスの靴




彼は、人の情緒の揺れ動きを観察して、楽しんでしまう自分の性分は自覚していた。
そして、それを今の今まで悪だと感じた事は無かった。おそらく、それはこれからも変わる事は無いだろう。

しかし…。
自分が唇を奪われた事よりも、赤の他人が傷付けられた方に怒りを覚える。そんな人間がいる事実がジェイドを驚かせた。
彼女のように、荒んでいない 綺麗な心の持ち主に出会った事が 今までなかったから。彼の心は、いつしか少しずつ変化していた。

ローズには、ずっとこのままでいて欲しい…。他人の傷を悲しめる彼女の心こそ、傷付いて欲しくない。

しかし。ジェイド達こそ、今まで彼女を傷付けて来た側の人間。だから今更こんなふうに思うのは、都合が良すぎると彼も自覚していた。
でも…それでも、思わずにはいられない。願わずにはいられなかったのだ。

この、身も心も綺麗な彼女を 側で守れる存在は 自分でありたいと。


「…ふふふ、」

まさか、こんな感情を持てる日が来るなど 彼は思っていなかった。
他人からの影響で、自分ですら気付かなかった自分に出会う事が出来るなんて。こんなに面白い事は無いと、ジェイドは笑いを堪える事が出来なかった。

『…な、何笑ってるのよ!聞いてる?私は怒ってるの』

「えぇ、聞いていますよ。たしかに私がやり過ぎてしまったかもしれません。以後、気を付けますね」

胸に手を当てて、にっこり笑うジェイド。

『…本当に分かってるのかしら…。なんか胡散臭いのよね、ジェイドは』

「ふふ、酷い言われようですね」

胡散臭いと言われても、全くこたえる様子のないジェイド。そんな彼と共に、ローズはまた歩き始める。

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