第16章 運命とガラスの靴
深夜の帰り道。
ローズとジェイドの服は元に戻り、馬車も消えてしまった。
「たくさんの馬車が停めてある中、カボチャが1つ置いてある画は なんともシュールでしたね」
楽しそうに話すジェイドとは対照的に、ローズは不満気だった。
答えを返して来ない彼女の背中に、彼は言葉を続ける。
「おや、もしかしなくても 怒っているのですか?」
『怒ってるわよ』
やっと返ってきた声は、随分とぶっきらな物だった。
「何故怒っているのですか?…ああ、王子様を騙す為とはいえ、また貴女に口付けをしてしまったからで」
『違う。私が怒っているのは、私に突然キスをしたからなんかじゃない』
くるりと振り返り、足を止めたローズをジェイドは見つめ 首を傾げる。
それが原因で怒っているのではないのだとすれば、彼女は一体どうして立腹しているのだろうか。考えを巡らせる。
『…ジェイド、貴方 楽しんでいたでしょう。王子の心が砕けるのを見て。まるでヴィランね。
人の趣味趣向にどうこう言いたくは無いけど、さすがにちょっと悪趣味だわ』
彼女の瞳は、月の光を蓄えて 怒りに光っていた。本気で怒っているのだと ジェイドは瞬時に悟る。
「………」