第16章 運命とガラスの靴
「だいたい君は…彼女の従者じゃないのか?」
苦し紛れ、といった感じで 王子はジェイドに問い掛けた。
「従者が姫に恋をしてはいけない決まりでも?」
『い、一応…あるわよ。そういう決まりも…』
ローズ自身は気にしないが、たしかに そういった法律も存在するには存在するのだ。
「おや、そうですか。それは困りましたねぇ」
口元に手をやって、ジェイドは笑う。その様子は、全く困っていなさそうだ。
「まぁ、なんにせよ…彼女は渡せません。
貴方とこの人は、住む世界が違うのですから」
ジェイドのこの言葉が、実に的を射ているなどとは 王子は知る由もない。
「僕は諦めないからな!」
「素晴らしい意気ですね。そんな貴方には、こちらを」
ジェイドは、王子の手をとると。その上にポン とガラスの靴を置いた。
「……??」
不思議そうにそれを見つめる王子に、ジェイドは笑顔で言い放つ。
「それを使って、貴方が “ 本当の ” 運命の相手に出会える事を 祈っていますよ」
魔法使いに言われた事はやった。2人はその場から離れようとする。しかし、その後ろを王子が付いてくる。本当に 見上げたガッツである。
「待ってくれ。せめて…どこの国の姫なのか 教えて欲しい」
きっと、心が折れそうなのを必死に堪えて2人の後を追っているのだろう王子。
その表情を見て、ローズは少し心が痛んだ。
しかし ジェイドは王子を可哀想に思うどころか、こう考えた。
これは、彼の心を 完全に折る必要がある。と