第16章 運命とガラスの靴
「今まで、僕の周りには…たくさんの女性がいました。外見ばかりを気にして、着飾り。僕に近付いてくる彼女達が…苦手でした。
でも、今日 貴女を一目見て…恋に落ちました。
貴女は…王子としての僕ではなく、一個人として僕を見てくれた。嬉しかった…」
どんどんヤバイ空気を察知するローズ。
『あ、ちょっと、待っ』
しかし、王子は彼女を逃がさない。
掴んだままのローズの腕を、自分の方に引き寄せ ぐっと距離を近付ける。
「ローズさん…どうか、僕の妃になって下さ」
「ああ 失礼」
「『!?』」
突然、ローズと王子の間に割り込んだジェイド。王子に 相変わらずの笑顔を向ける。
そして おもむろにローズの腰を引き寄せると、面食らったままの王子に言う。
「すみません、彼女は僕のものなので…お妃候補は 他の女性から選んでもらえますか」
『!?、?』
王子よりも、彼女の方が目を白黒させていた。腰に回されたジェイドの手と、満面の笑みを浮かべた彼の顔を 交互に見る。
「他の女性から…か。それは無理だ。何故なら、彼女は僕の 運命の相手だから」
ジェイドの瞳が少し見開かれる。
「…驚きました。また、運命 という単語を聞くとは思わなかったので。ふふ、みなさん本当にその言葉がお好きですね。
まったく…それはもう、聞き飽きたんですよ…」
笑顔の中にも、軽い凄みのようなものが含まれているよう。
それを感じてか、王子の背にぞくりとした悪寒が走る。