第2章 オッドアイを保有する兄弟
「そんな事よりも、そちらは首尾良く事は運んだのですか?」
アズールは、はなからフロイドではなくジェイドに問う。
「えぇ。全ては予定通りに。
ステファン王と我が国王は、元々旧友という事もあり
何も疑う事なく同盟に賛成して下さいました。むしろ、今までどうして同盟を結んでいなかったのかと、不思議がる始末で…」
「ふふふ…、いや失礼。続けて下さい」
あまりにも容易に手の上で転がる王達に、ついつい嘲笑が出てしまった主人。
ジェイドは報告を続ける。
「少々気になったのは…やはりフィリップ王子の存在でしょうか。
彼は…ヒューバート王よりも、余程厄介な存在かと」
「彼は、聡いですからね。我々の目的に勘付いていると見て間違いないでしょう」
アズールは、顎に手をやって言う。
彼専用の椅子の背もたれに、軽く体重を乗せると。それはキシリと音を立てた。
「もしも将来、彼とオーロラが予定通りに結婚し…オクタヴィネルとディアソムニアが合併してしまえば…掌握は困難を極めますね。
そうなれば、ほぼ間違いなく王権はフィリップ王子に移り…
彼が政を任されるでしょうから」
神妙な顔付きで言う兄に、弟は言った。
「そんなの簡単じゃーん。やっちゃえば良くない?フィリップ王子様を。
お姫様と結婚するまでにさぁ」
フロイドは、泥臭い提案を軽快に提示した。そんな彼に、アズールは一応答える。
「そんな事は僕だってとっくに考えました。
しかし…やはりリスクが高すぎます。
大切な1人息子が、不審な死を遂げてごらんなさい。
周りからは、付き合いの短い僕達を疑う人間が必ず出て来ますよ」
「…ん〜〜超めんどい」
ついにフロイドは、考える事を放棄した。
元々彼が本気で考えたところで、アズールとジェイドの助けになれるとは本人も思っていなかった。
「……オーロラ姫。ですね」
ジェイドは意味深に呟いた。
「その通り。フィリップ王子を始末するよりは、そちらでしょうね。
彼女が不審死しても、僕達を疑う人間は少ないでしょう。
それに…彼女はディアソムニア唯一の王位継承者です。
お姫様さえいなくなれば…あの国は傾くでしょう」