第2章 オッドアイを保有する兄弟
——隣国、オクタヴィネル
フィリップを自室へと送り届けた、フロイドとジェイド。
彼等は主人の部屋にて、アズールを待っていた。
「〜♪」
「おやジェイド、なにやら今日はご機嫌ですね」
鼻歌を歌うジェイドに、フロイドは声をかける。
「あは〜そうなんだよねぇ。
いや、あのお姫様…予想以上に面白くて」
意気揚々と報告する弟に対して、兄の方は溜息をついた。
「まったく貴方は…。また悪い癖が出ていますよ。
面白さで物事を図るのはやめて下さい。
いいですか?好奇心は猫をも殺すのですよ」
ふわついたフロイドを、しっかりとした口調でジェイドはたしなめる。
彼等は双子というだけあって、それなりに相手を理解していた。
フロイドが浮ついているせいで、“計画” に支障でもきたそうものなら…アズールも黙っていないだろう。
「ジェイドこそさぁ、退屈と無関心が人を殺す。って言葉知らないのー?
毎日が楽しくなきゃ意味ないじゃん」
いつのまにか意外な知識をつけていた弟を、驚いた瞳で見つめる兄。
さて次はどのような言葉を選ぼうか。そうジェイドが考えていた時、やっと部屋の主人が長い会議から帰って来た。
「おかえりなさいアズール。会議はどうでしたか?」
「…聞かなくても分かるでしょう。
僕の貴重な時間を2時間15分も無駄にしましたよ」
アズールと呼ばれた男は、ひどく不機嫌だった。
透き通るような銀髪をかき上げてから、右手中指で眼鏡の位置を直す。
「そんなに無駄ならさ。会議なんて退屈なモノ、出なきゃよくない?」
ふかふかのソファのに背を預けて、フロイドは言った。
そんな彼にアズールは答える。
「そうはいきませんよ。
国王様に気分良く動いて頂くには、ご機嫌取りも大切な工程の1つですから」
「…ふぅん」
一応返事はしたものの、正直フロイドにとってはどうでもよかった。
アズールやジェイドと違って、細かい計算は苦手だし
自分が退屈しなければ、別にオクタヴィネルやディアソムニアがどうなったって、本当にどうでもよかったのだ。