第2章 オッドアイを保有する兄弟
「えぇ〜、お姫様、可愛いよ?」
まるで、お気に入りの人形を取り上げられそうになった子供のような発言に、ジェイドはキロリと彼を睨む。
睨まれたフロイドは、肩をすくませてすぐに口を噤んだ。
ジェイドはそれを確認すると、再びアズールとの会話を再開させる。
「残る問題はただ1つ…
マレウス・ドラコニアですね」
「はい。奴はかなり厄介ですよ。
せっかく手に入れた国に、あんな扱いにくい最強魔法士に居座られては…。
ディアソムニアの価値が右肩下がりです」
フロイドは考えていた。そういえば、マレウスの事を直接見た事はないな、と。
勿論名前はよく聞く。彼も魔法士の端くれなので、世界1の呼び声が高いマレウスの事は知っていて当然。
ぼんやりと思う。
もし彼と自分がやり合えば、どうなるのだろう。
勝てないにしても、一体どれくらいの差がある物なのだろうか。と。
「本当に、厄介な存在ですね。
どうしましょうか、アズール…」
ジェイドはなんとなく分かっていた。主人はもう、何かしらの作戦を思いついているのではないかと。
すると案の定、アズールはニヤリと笑った。
「…潰し合ってもらうとしましょう。
ディアソムニアの王族の皆様と…
ディアソムニアいちの大魔法士、マレウスに。
こちらは一切痛手を負う事なく、隣国を手に入れられるかもしれませんよ?」
自分の主人の狡猾さに、ぶるりと身を震わせるジェイド。
何かとてつもなく面白い事の始まりを予感して、キラキラと目を輝かせるフロイド。
まさか隣国の城内の小部屋で、自分のその後の人生を大きく左右するような小会議が行われているなどと…。
オーロラは知る由もなかった。