第15章 忍び寄る海のギャング
『やったーーー!』
「やりましたね」
森を抜けた事で、歓喜にむせぶローズとニコニコ目を細めるジェイド。
2人は仲良く手の平をぴったりとくっつけて喜ぶ。
『はっ!』
あまりの喜びに、ジェイドを警戒の対象として見ていた事を失念していたローズ。それを思い出して、すっと体を引く。
「おやおや、まだ僕は警戒されているのですね。悲しくて泣けてきそうですよ」
しくしく、と白々しく泣き真似をする男を置いて 彼女はまた歩き始める。
「清々しい程の無視ですね。本当に傷付いてしまいそうですよ」
仕方なくジェイドも、また彼女の後に続く。
すっかりと夜も更けてきた。体感的には夜の6時か7時くらいだろうか?街灯もない道は闇に包まれていく。
そんな中、2人の前に現れた大きな1軒家。野宿を覚悟し始めていた彼女達にとって、まさに一筋の希望だった。
『ジェイド行きましょ!今夜泊めてもらえるかどうか聞いてみる!』
「…待って下さい。家の前に誰かいます」
今すぐにでも走り出さんとしていたローズも、その言葉に足を止める。
たしかにジェイドの言う通り、家の前にある庭に人影があった。
ここからでは、よく見えない。2人はもう少し近付いて その人物を観察する事にした。
2人は中庭に侵入して、木の陰からそっと様子を窺う。
どうやら その人物は、性別は女性。歳のころは50くらいで、水色のフード付きローブに身を包んでいた。グレイヘアーをしており、ふくよかな体型であった。
そして、何やら意気消沈した様子。溜息をつきながら家を見上げたり、所在無さげにウロウロしていた。