第15章 忍び寄る海のギャング
『……もういい。帰る』
「どうぞ ご自由に」
ローズは、背の高い草をザクザク踏み鳴らし 歩き始めた。少し距離を空けてジェイドは付いていく。
彼女は、ここが森の家の近くだと疑っていなかった。しかし歩けど歩けど、見知った道が出てこない。
『…え、ちょっと ここどこ』
「僕は申し上げましたよ?ここは、覚める事のない夢の中だと」
たしかにそんな言葉を聞いた気もするが。なんにせよ、キスの衝撃で全部吹っ飛んでいる。
『それ、もっと詳しく!』
「……ここは…」
ジェイドは仕方なく、さきほどリドルとフロイドにしたばかりの説明を 彼女にも繰り返した。
『…あははっ!それじゃ貴方、双子のフロイドに裏切られて薬盛られたのね!なにそれ傑作ー』
「今の話を聞いて、そこに引っかかるとは。貴女なかなか余裕がおありですね」
『はぁ…そうよ。笑ってる場合なんかじゃないわ』
キリっと表情を引き締め直すと、ローズはジェイドに向き直る。
『なんだかよく分からないけど、私と貴方の体の本体は、あっちにあって無事ってことね』
「そうですね。ここにいる僕達は、いわば思念体ですから。
…少なくとも、貴女の体は無事でしょうね」
ジェイドは、少しだけ不安になった。もし元の世界で、自分の体があの二人によって何らかの危害を加えられていたら…。
仮に上手く事が運んで、この世界から抜け出せたとしても、自分は無事に五体満足で帰れるのだろうか と。
もしもローズを見捨てて、自分だけ帰ろうものなら…。それこそ体を人質に取られたジェイドには、地獄しか待っていないだろう。
「…うふふふ、どうやら貴女と僕は 一蓮托生のようですね」
『……きゅ、急にどうしたの?』気持ち悪い