第15章 忍び寄る海のギャング
ジェイドが目を覚ますと、そこは森の中だった。ほんの少しだけ、もしや自分は夢の国などにはトリップしておらず。ここは森の家の近くなのではないか、という淡い期待を抱いた。
しかし、そんな期待は見事に打ち砕かれる。なぜなら、隣にはローズが気持ち良さそうに寝息を立てていたから。
「………」
なんとも呑気な寝顔を晒している 彼女の肩を揺する。
「起きて下さい」
『…ぅ…、ん』
ローズが薄く瞳を開けると 視界には、さきほど自分を襲った男が飛び込んでくる。
咄嗟に彼と距離を空けて警戒態勢を取る。
「ふふ、そんなに警戒なさらなくとも。もう何も致しませんよ?」
まるで小動物のようなローズの姿を見て、ジェイドは嘲笑う。
『…そ、そんな事言って、油断させてから また私に口付けするんじゃないの?』
大木の後ろに身を隠し、顔を半分だけ覗かせている。そんなローズにジェイドは言ってのける。
「心外ですね。あれは、あくまで貴女に薬を飲ませる為の手段です。
それとも、特に理由がなくても 男性からキスを迫られるくらい ご自分には魅力があるとお思いですか?それはそれは、貴女は大層ご自分に自信がおありなのですね」
『……』
嫌いだ。彼女はたったそれだけが、心の中に浮かんだのだった。