第15章 忍び寄る海のギャング
「彼女の体は、この通り…眠った状態。ですが意識だけは、その夢の中で存在し続けるのです」
にっこりと笑って、恐ろしい事を言ってのけるジェイド。
リドルは後悔した。今までずっとフロイドを警戒していたが、本当に気を付けなければいけない男は、こっちの方だったのだ。
「…彼女を、目覚めさせる方法を教えてもらおうか」
「ですから、そんなものは存在しません。この世界であれば、それが遥か彼方であっても いつかは帰ってこれるでしょうが…。
夢の中という、いわば異世界となると。難しいでしょうね」
まさか、マレウスの呪い以前に 同盟国のオクタヴィネルの手によって彼女が眠りについてしまうなど。リドルも予想していなかったのだ。
「…っ、よくもそんな事をこのボクにベラベラと話せたものだ。
覚悟は…出来ているんだろうね?」
リドルの体は、濃赤色のオーラに纏われる。それは怒りと一緒にジェイドへと向けられる。
「…ふふ。もし貴方が、我々が裁かれる事を心配して下さっているのなら…申し上げておきましょう。
私は、お姫様に 剣を向けたわけでも。毒を盛ったわけでも。来襲したわけでもありませんよ?
その証拠に…彼女は、ここでこうして生きているではありませんか。
アズールの薬で彼女がこうなってしまったという証拠は、どこにも無いんですよ」
たしかに彼の行いにより、ローズが眠りについてしまったと 裁判で証明するのは難しいだろう。
アズールの研究室から、同じ薬が出てくるなどというミスを あの男がするはずもない。
「………」
リドルは、かぶりを振る。今考えるべきは、アズールの悪行を証明する事などでは無い。
どうやって、ローズの意識をこちらの世界に呼び戻すか だ。