第15章 忍び寄る海のギャング
フロイドだけでなく、リドルまでもを相手するともなると。逃げおおせる事は不可能だと考えたジェイドは。
2人の監視の中 共に森の家へと連行される流れとなった。
ジェイドは、縛られる事も無く。殴られるわけでもなかった。それどころか、いま自分の前には温かい紅茶が見舞われているのだった。
自分が思うよりも、意外とフロイドもリドルも落ち着いているのだろうか。ローズが倒れてしまったというのに…。
少し違和感を覚えたものの、お茶好きな彼はそれに口を付けた。
「…やはり、王子様御用達の茶葉は一味違いますね。とても美味しいです」
「それはどうも。それで?キミはいったい、ローズに何をしたんだい?正直に話した方が身の為だよ」
リドルとジェイドの会話を、すぐ隣でフロイドが聞いている。
「…何も隠すつもりなど ありませんよ。今さらどう足掻いたところで、彼女が目を覚ます事などありませんからね。
全てお話しましょう。
彼女は…夢の国にいるのですよ」
要領を得ないジェイドの説明に、リドルとフロイドは首をひねる。
「フロイド。貴方は耳にした事があるはずですよ。これは、アズールが研究に研究を重ね、作り出した秘薬です」
「…あー…そう言われれば、なんかアズールが上手くいかないってイライラしてたような気もする〜」
ジェイドは頷く。
「アズールが作った魔法薬は、飲んだ人間を夢の国にトリップさせます」
「夢の国…だって?」
形の綺麗なリドルの片眉が上がる。
「えぇ。慈悲深いアズールは、お姫様を殺すのではなく…。
どこか遠いところへ 移動させる手段を選んだのですよ」
「じゃあ、お姫様は今 夢見てるってわけ?」
それは少し違います。と、ジェイドはすっかり気に入った紅茶を 優雅に口付ける。
「彼女が夢を見ているのではなく…
この世界のどこかに存在する、誰かの夢の世界にトリップしたのです」