第15章 忍び寄る海のギャング
『っう、…けほっ、げほ!っ、な、にを…飲ませたの?』
彼女の質問には答えずに、ジェイドはにっこりとその両目を閉じている。
「ジェイド!!」
「………」
突如聞こえた、自分の名を呼ぶ片割れの声。そちらの方向にゆっくりと振り向くジェイド。
そこには、額に前髪を張り付かせて 肩で息をするフロイドの姿があった。
フロイドは、ゆっくりと歩みを進め ジェイド達のいる川の中へ足を踏み入れる。
「…お姫様に、何をした」
「苦しいですよフロイド。手を離して下さい」
両手でジェイドの胸ぐらを掴む。至近距離でフロイドの瞳を見たジェイドは悟る。完全に瞳孔が開いていて、彼の怒りは最高潮だ と。
『…ん、…ぁ、れ…』
ぐらりとローズの体が傾く。フロイドが咄嗟に彼女の体を受け止めた。
そして彼女はそのまま、フロイドの腕の中で意識を失ってしまった。焦ってすぐに呼吸があるか確認するが、規則正しい呼吸音が聞こえてくる。どうやら眠っているだけのようだ。
一方、フロイドから解放されたジェイドは とりあえず任務は成功させたので 一度引こうと考えていた。今の状態のフロイドを相手するのは、やっかいだと思ったのだろう。
しかし。退路を一瞬にして塞がれてしまった。目の前に現れたのは、炎の壁。
そしてその壁はどんどん燃え広がっていき、やがては彼等をぐるりと1周取り囲んだ。
「…おやおや。これは困りましたね」
全く焦る様子も無く、ジェイドは これを繰り出した人物の方を見て言った。
「どうして、ローズが倒れていて フロイドが2人いるのか。
説明をしてもらおうじゃないか」