第15章 忍び寄る海のギャング
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『…ジェイド』
彼に会うのは、何年振りか。当然 子供の頃以来会っていない。相変わらず冷たい目をしていた。
ローズは身震いを覚える。それは、川の水で体が濡れてしまったからではない。
「顔付きもフロイドに寄せていたはずですが…。もしかして、左右の目の色が違うところから気付いたのですか?
お姫様は、存外洞察力に長けていらっしゃる」
笑ってはいるのに、不安な気持ちを駆り立てられる。ジェイドのそういうところは何一つ変わっていなかった。
身の危険すら感じたローズは、無意識に懐のナイフへと手を伸ばしていた。
「…随分ですね。久々の再会だと言うのに 僕にそんなものを向けるのですか?」
ローズの手は、震えていた。その震えは、構えているナイフの刃にも伝わっている。
「あぁ可哀想に。震えているのですね。大丈夫ですよ、何も怖がる事なんてありません。
貴女はこれから…覚める事の無い、夢を見るだけですから」
ジェイドの言葉を、丸っ切り理解出来ないローズ。ただ目の前に立つ大きな彼を見つめるしか出来ない。
彼は、懐からアズールから手渡された 巻貝型の小瓶の栓を開け。中の液体を一口含んだ。
そして、自分に向けられた刃を直接手で掴んだ。
『っっ!』
まさかの行動に、ローズの気は動転した。ジェイドの手袋は裂けて、見る見るうちに赤い血が滴り落ちる。
落ちた血は、川の流れにあっという間に流されていく。
彼女は一歩後ずさる。ばしゃ、と足物で水音が鳴る。