第14章 我儘になりたいクイーン
『イヤ』
キッパリと申し出を断ったローズ。
目を丸くするリドルに、彼女は続ける。
『私はね、貴方のお母さんにどうしても言いたい事があるの』
そう言うと、ローズはリドルの前に出て 女王の方へと向き直る。
そして、渾身の一言を放つのだ。
『これ以上!リドルをいじめないで!!』
「……………っっっ!?!?」
怒りで言葉すら失っている女王。小さくも逞しいローズの背中。
それを見つめるリドルの視界は、じわりと歪んだ。
どうして、こんなにも自分の為に戦ってくれる女性がいるのだろう。
どうして、そんな女性が自分の前に今立っているのだろう。
リドルは、歓喜のあまり頭が上手く働かなくなっていた。しかし、ハッキリと分かっている事はある。
それは、自分も戦わなければいけないという事。
最も大切な女性に、ここまで戦わせておいて。自分だけその背中に隠れているわけにはいかない。
一度だけ、ギュっと瞼を閉じると。リドルはすぐにその目を開けて、女王に宣言する。
「…ボクは、勿論この国が大切です。
ですが、彼女…ローズも大切なのです。
だからボクは…大切な国と、愛しい人の両方を手に入れられる王子になります。
今まで…ありがとうございました」
その言葉を体の外に出した瞬間、今まで彼の心を まるで閉じ込めるように覆っていた黒いガラスが バリンと弾けてなくなった感じがした。
ついに、彼の心は解き放たれたのだ。
「……る、ません……許しませんよ!!絶対!」
「いつまでもボクが、君の言いなりになるとお思いでないよ。
どうしてもこのボクの邪魔をすると言うのなら…その首、跳ねてしまうよ?」
『あっはは!すっかりいつものリドルね。おかえりなさい』
彼女の、おかえりなさい。その言葉を聞いた瞬間 彼は思った。
あぁ、これが 自由という物なんだ。と。