第14章 我儘になりたいクイーン
「同盟国の姫だからと、助ける事を許した私が間違っていたのね。
ありがとうリドル。気付かせてくれて。
さぁ、今すぐにディアソムニアに兵を送り込みなさい!」
「そんな事!このボクが許さない!」
自分の母親の狂った言動に、ようやくリドルは思考が追いつく。
「誰に向かって口をきいているの!」
女王は、常に持ち歩いているステッキでリドルの顔を殴りつけた。
痛々しい硬い音が、部屋に響いた。
「やはり、貴方に姫を近付けたのが全ての間違いだったわ!
リドル!貴方はこの国の為に生まれて、この国の為だけに生きて行くのよ!
これは、誰も変える事の出来ない絶対のルール!黙って従っていれば良いのです!」
リドルは、両膝を地面に付ける。殴られた事が原因ではない。
心が、折れそうなのだ。
「あぁ、姫に会うまではあんなにも良い子だったのに!一体どうしてしまったというの…。
私はこんなにも貴方と国の事を想っているというのに」
女王が喋るたびに…この部屋の酸素が薄くなっていくようだった。
彼女の言葉が、何も理解出来ない。
自分の言葉が、何の意味も成さない。
息が…出来ない。
バァン!!
『リドル!!』
「っ…?!」
大きな両扉が、大きな音と共に開かれ。
その扉からは、最も愛しい人の姿が現れた。
リドルは、これは自分が見せている 都合の良い幻想だと思った。
だって、こんなところにローズがいるはずがない。
こんな場所に現れて、自分の名前を呼んでくれるはずなどない。
でも、例え幻想でも良かった。彼女が、自分が作り出した幻想だとしても。
彼を再び立ち上がらせるには十分だったから。
それに、やっと…
息が…吸えた気がした。