第14章 我儘になりたいクイーン
———謁見室内
「それで?リドル。貴方はルールを忘れたの?
“ 女王に会うには、必ず前もって約束を取り付ける ”
そんな簡単な事も守れないでどうするのよ!」
女王の、まるで氷の刃のような言葉に リドルの心は悲鳴を上げてしまいそうだった。
図らずしも足が震える。全身から血の気が引く。幼い頃からの記憶が蘇る。
しかし、彼は決めたのだ。自分の為に戦うと。ここで引き下がっていては、いつまで経っても自分は変われないと分かっていた。
「…ボクは、自分の母親に 話をしに来ただけです」
「!!」
リドルの言葉は、女王だけでなく。周りにいる大臣や衛兵達の度肝を抜いた。
彼の…生まれて初めての、反抗的な言葉。
それは、この国にとってとんでもなく大きな意味を持っていた。
「ボクは、もう嫌なんです。貴女の、言いなりになって生きるのは…。どうか、お願いします。
ボクに…一人の女性を守る権利をください」
この要求がまかり通るという事は、この国の法律が覆るという事。
そんな事は、決してあってはならないのだ。
この、ルールが絶対の ハーツラビュルでは。
室内の 全ての人間が事の成り行きを見定めている中、女王はその自らの足でリドルに歩み寄る。
そして、底冷えするくらい優しい声で囁いた。
「…ふふ、分かったわリドル。私が間違っていました」
「!!」
リドルは、ついに自分の訴えが母親の心を打ったのだと。喜びで顔を上げた。
そんな彼に、女王は言葉を続ける。
「賢い貴方を拐かす姫など、存在してはならない。
ふふ。ディアソムニアの姫の首、すぐに跳ねてしまいましょう」