第14章 我儘になりたいクイーン
「そんなふうにさ、あいつ等を変えたのって…
アンタなんだろ?
だから、恩返し」
にひ、と笑うエースの顔は なんとも晴れやかだった。
「だからさ…」
エースはローズにうやうやしく頭を下げると、左手を腰の後ろ。右手の指を綺麗に揃えて 胸に添えた。
「俺が必ず、お姫様を 王子の元までお送り致します」
その余りにも美しい所作の一礼を見て、ローズは目頭が熱くなった。
『…ありがとう。よろしくね。エース』
「俺にまっかせとけ!
でもまぁ、俺に出来るのは アンタをリドル王子の元まで送り届けるとこまでだから…。そこからは、お姫様が頑張ってな。
多分…あの人救えんのはアンタだけだから」
そう言って、エースは ぽん。とローズの肩に触れた。
「おい!そこで何してるんだ」
まただ!と、3人は飛び上がりそうになった。しかし…
「ローズにフロイド!?どうしてここに…」
そこに立っていたのは、トレイだった。
「はぁ〜…なんだワカメちゃんかぁ」
「その呼び方はやめてくれって言っただろフロイド。せめて俺も皆んなみたいに生きている物にしてくれ」
海苔ちゃんでも良いよ?というフロイドの言葉を遮って、ローズはトレイに駆け寄る。
『トレイ!会えてよかった。リドルは無事なの?私、彼が全然森の家に来ないから 心配で…』
トレイは、少しの時間をかけて迷ったあげく。目の前にある扉を見て言った。
「リドルなら…今、この中だ」
『え?』
そう。彼女達が偶然にも辿り着いていたこの場所 それは…
今まさに、女王とリドルが対峙している謁見室だったのだ。
「アイツは今…必死に、戦ってるんだよ」
『戦ってる、って…一体 誰と?』
「自分自身…とでも、言うかな」
その複雑な事情を、ローズがトレイから説明されている間。
その話に興味が無いフロイドは、全く違う事を思っていた。
「……」
(…アイツが、いない)
いつの間にか、音も無くその場から姿を消していたエース。
彼がどこへ消えたのか、そして 彼が本当にローズに取って害が無いのか。
それだけを考え続けていた。