第14章 我儘になりたいクイーン
強引に首を回転させられた男は、ゆっくりと白目をむいて 泡を吹いてその場に崩れた。
「っっ!ひ、人殺し!!」
『フロイドっ、貴方 なんて事を…っ』
「殺してねぇって」
ローズは、倒れた男の元に跪き 口元に手をかざす。
『あ…ほんとだ。息してる』
ほっと、2人は胸をなで下ろす。
気絶してしまった男を、適当な部屋に押し込んで。3人の隠密が再開する。
『ねぇエース』
「どうした?」
辺りに気を配りながら、エースは彼女の方へ振り向いた。
『どうして…貴方は私にここまでしてくれるの?』
普通に考えれば、エースにとってローズは邪魔な存在のはずだ。
このまま彼女が何もしなければ、リドルはこの国の王子として政に専念するからだ。本来ならば、それこそが正しい王族の姿だろう。
王子自らが、国を空けてまで1人の女性を 身を呈して守る。本来ならば、そんな事はあってはならない。
「…ん、なんでだろ」
エースは、すい とローズの顎先をすくい上げ 自分の顔を近付けて言った。
「可愛い女の子が、目の前で困ってるからじゃねぇ?」
『っ、!』
「…………」
エースは、自分に放たれる殺気を感じて すぐさまローズから手を引いて ハンズアップする。
「っていうのは冗談でー…」
殺気を放っていたのはフロイド。
今の愚行で 自分はよく殺されなかった。と、エースは生の実感を改めて噛み締めた。
「…好きなんだよな。今のあいつ等の方が」
『??』
「規則規則ってうるさかったリドル王子が、なんだか丸くなって。
真面目で堅物だったデュースが、どうやったら好きな子を落とせるかって 本とか読んで勉強し出してさ。
仕事人間だったトレイ支配人が、毎日キッチンで菓子作ってんだぜ?
あはは!こんなの超面白いって」
本当に楽しそうに話すエースに、ローズは時間が経つのも忘れて 耳を傾け続ける。