第14章 我儘になりたいクイーン
「飽きた」
『!』
ローズは分かっていた。この男がこの言葉を発したその時には…
絶対に、何かが起こる と。
ただ、物事が確実に好転するわけではないという事も理解していた。
祈るような気持ちで、彼を見つめる。
「いや、飽きたって言ったってさ…地道にゴール探すしかどうしようも」
「カニちゃんカニちゃん?ちょっとさ〜、 こーんなふうに 屈んでみて?」
フロイドは、自分の膝に両手をついて、体を折り曲げてみせる。
「…は?急になにそれ…」
混乱した様子を見せながらも、エースは言われた通りに 人間跳び箱の姿勢を取った。
「意味わかんねぇよ…これで一体なにが」
エースは、見た。
屈んだ自分に向かって、フロイドが人智を超えたスピードで猛突進してくる姿を。
「っ!?!?」
身の危険を感じたエースは、思わずもたげていた首を引っ込める。
だん!!
エースの背中に、フロイドの両手がついて凄い衝撃が伝わる。
『……フロイドが……空を、飛んでる』
ローズは、口を半分開けて 文字通りフロイドが宙を舞っているのを、ただ見上げていた。
「………」
(右、左…左、右)
フロイドは宙を舞いながらゴールの位置を確認。そして、体を捻りながら首を回し、できる限りの視界を瞬時に記憶した。それから、そこまでのルートを導き出す。
だん!!!
垣根の向こうから、フロイドが着地したのであろう音を ローズとエースは聞いていた。
「……あの男、何者?」
『好奇心が強くて、最高に飽き性な男』多分