第14章 我儘になりたいクイーン
合流したフロイドと共に、薔薇の迷路を行く。
「…ねぇ、カニちゃんはさぁ」
「………え?俺?」カニ?
フロイドが 人を水中生物に当てはめて名前を呼ぶ事をマイブームにしているなど、知る由も無いエースは かなり面食らった。
「なんで俺達の事を知ってたわけ?」
フロイドの言葉を聞いて、ローズは改めてエースとの初対面を思い返す。
彼は、たしかに言った。
“ やっぱアンタら2人、ほんと面白いなぁ ”
やっぱり という単語は、元々自分達の事を知っていたからこそ出る言葉ではないだろうか。
「あー、2人の事は、デュースからよく聞いてっからね。
ディアソムニアのお姫様のローズと、オクタヴィネルの参謀のフロイド。だろ?」
楽しそうな笑みを浮かべて、エースは言った。
「……ふーん」
フロイドは 前を歩くエースを、猜疑心に満ちた瞳で見つめていた。
その様子が、なんだか冷酷な蛇のように見えてしまい。ローズは密かに身震いしたのだった。
「……あれ?」
どれくらい歩いただろう。どれくらいの角を曲がっただろう。
そろそろゴールではないか。そんな希望を打ち砕くような言葉がエースの口から飛び出す。
「…わりぃ。迷っ…た、かも」
『え…、えぇ!?』
「いや、途中まではまじで完璧だったんだって!でもほら、アンタらが話しかけてくるもんだからさぁ…、道順どっかでミスっちゃったみたい」てへ
てへ。で済む問題ではない。
舌を出して 全く悪びれる様子なく微笑むエース。ローズはどうしても素直に、いいよ とは言えなかったのだった。