第14章 我儘になりたいクイーン
「俺がここにいるのは、ローズの希望だからです。
…彼女が、自分の護衛はいいから、貴方の身に何が起きているのか確かめて来てくれって。
きっと助けが必要だから、行ってやってくれって、頼んだんですよ」
彼はリドルにまた一歩近付いて、さらに声を荒げる。
「どうして彼女がそう言ったか分かりますか!?
心配だからですよ!大好きだからですよ!貴方の事が!だから自分の身の安全よりも、貴方の事を優先したんです!」
デュースの言葉を受け、体に怒りの火を纏っていたリドルが落ち着いていく。
怯んだわけではない。
ローズとデュースが、心の底から 自分の事を案じてくれていると伝わったからだ。
「…デュース…。でもこれは さっきトレイが言ったように、女王陛下の命令なんだ。
あの人の命令ならば…ボクにはもう、抗う術はない」
リドルの、このどうしようもないという感情は デュースにも理解は出来る。
ただ、納得はしない。
「俺は…貴方が森の家に現れなかった時点で、こうなってるって予想はしてました。
同時に、勝手に思ってました。貴方はきっと今頃、この城で戦ってるんだろうって。
でも…違った。なんなんですか…戦う前から諦めて、従いたくも無い命令に頷いてる。
貴方が戦っているなら、迷う事なく自分も加勢するつもりでした。でも正直…ガッカリですよ」
デュースは、自分に気合を入れるように 自らの拳を手の平に打ち付けた。
「そんな人に、ローズを任せる事は出来ません!
貴方のご命令通り、彼女はこの僕が幸せにしてみせますよ!」
自分の言いたい事だけを言うと、デュースは2人を置き去りにして廊下の先に消えていくのだった。
「……ははっ!言うなぁアイツ」
「…そんな命令は、出していないのだけれどね」
見事なデュース劇場に、トレイは楽しげに声を上げ笑う。
リドルは、呆れたようにため息を零した。
「まぁでも…あそこまで言われたら、黙ってるのも癪じゃないか?」
「その通りだよ。家臣にあそこまで言われてしまったらね。
…ねぇトレイ…」
「ん?」
「…ボクにも、出来るだろうか」
トレイは、何がだ?とは聞き返さなかった。代わりに、自信を持ってしっかりと答える。
「出来るさ。だって今のお前は、戦う意志を持ってる。
お伴しますよ。王子様」