第14章 我儘になりたいクイーン
ほぼ一日の時間をかけて、馬を走らせたフロイドだったが。未だに目的の城の到着には至っていない。
「あーーケツがいてぇ」
下品な物言いが気になりつつも、ローズは謝罪の言葉を口にする。
『ごめんねフロイド。私が上に乗ってるから余計に負担よね』
「べつにー?オレはお姫様と一緒だと面白いから好き〜」
本当に嫌味なく言ってのける彼に、少しだけ心が軽くなるのを感じた。
『でも…本当に遠いわね。あまり家を空けると、ジャコとメダカの事が心配だわ』
「…………」
『?…餌はたくさん置いてきたから、大丈夫だと思うけど』
違和感を感じるほどの間があったが、ローズは続けた。
「…あー、ひよこね。大丈夫じゃね?」
『フロイド。貴方絶対忘れてたわね。自分が連れて来て名付け親にまでなったくせに!』
あはっと笑いで誤魔化すフロイド。
その時。彼の目線の先は、ようやく捉えた。
目的地であるハーツラビュル城の、城頭を。
「やっと見えたー」
フロイドが手綱を華麗にしならせると、馬は少しだけ駆けるスピードを上げる。
『ね、ねぇフロイド…私、他所様のお城にお邪魔した事って無いんだけど…。どうするのが礼儀作法として正しいの?』
物心付いた時には、既に森の家に住むようになっていたし、それでなくても彼女は王族の姫だ。
彼女に会いに客人が来る事はあっても、ローズ自らが誰かに会いに出向くなど 経験が無い。
「えー、お姫様 登城した事ねぇの?ダサ」
『あのねぇフロイド…ダサいとかじゃなくて…。貴方なら、少しはこういうの慣れてるでしょ?教えてちょうだい?お願いだから』
「……んーっとねー…。あ、そうだぁ。こう言えば良いんじゃね?」