第13章 絡みつく海のギャング
『私の事はいいから、デュースは一度ハーツラビュルへ戻って』
彼女は分かっていた。
自分がここにいるから、デュースもここに留まっている。
「それは…出来ない。俺がここを離れてしまったら ローズの身に危険が迫った時 助けられないだろ」
『でも…昨日から貴方 酷い顔してる…見ていられないの。不安なんでしょう?ハーツラビュルで何が起こってるか…。
それに、私もリドルの事が心配。もし城で何か起こっているんだとしたら きっと デュースの力を必要としてる』
静かな静かな森の家の中で、彼女とデュースは見つめ合う。
「……ローズを1人には、出来ない」
「オレがいるじゃーん」
神妙な顔付きの2人とは対照的に、ズバ抜けて明るいフロイド。
「…信用出来るか。っていうか、フロイドは今日帰る予定だろ」
「こんな状況なのにさぁ、俺だけ消えるわけないよー」
この男は、他人を気遣って自分の行動を決めるようなタマではない。そんな事はデュースは重々理解してした。
しかし今は、ワラにも縋りたい状況なのだ。
「…………」
迷うデュースの背中を、ローズが押す。
『デュース。私は本当に大丈夫。だから…リドルを助けてあげて』
彼は、真剣な彼女の瞳を見つめて 静かに頷いた。
「リドル先輩が…何に巻き込まれてるのかは、大体の予想はついてるんだ。
僕が必ず、ここに連れて帰ってくるから。だから、待っててくれ」
デュースは彼女にそう言うと、馬に乗ってハーツラビュルへと向かったのだった。