第13章 絡みつく海のギャング
『フロイドは、本当にまだここにいていいの?オクタヴィネルの人達に怒られない?
フィリップとか…』
「…あっは。へーきへーき」
『そ、…そう』
彼に助けられておいて何だが、この自由奔放なフロイドを城に置いているフィリップは、かなりの苦労をしているに違いない。とローズは思った。
そして、彼は平気だと答えたが。勿論平気なはずはない。彼の休暇が伸びるわけではないのだから。
無断で姿を消せば、アズールやジェイドにどやされる事は必至。しかし、彼にとってそれは些細な事。
今目の前で起こっている いざこざの終着を、自分の目で見届けるまでは帰らない。
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デュースがここを出てから24時間。
ローズは、リドルやデュースの身を案じ 食事も掃除も手に付かず。ただただ時間が経過するのを待っていた。
「…ねーねーお姫様?今日もずーっとそうやって固まってるの?それって つまんなくない?」
『………』
フロイドはいい加減、彼女のこんな姿は見飽きてしまった。
「そんなに心配ならさぁ、自分の目で確認しに行ったら?」
彼の言葉に、ローズは顔を上げた。
『……駄目よ。それは、駄目。私はここを離れてはいけない』
「ふーん…誰が決めたのぉ?それ」
心の揺れ動くローズを、フロイドは楽しそうに見つめている。
『それに…私、ハーツラビュルまでの道のりを知らないわ』
「…オレは知ってるよ」
『…フロイド、』
彼は、口元を歪めて奇妙な笑いを浮かべていた。
「…いいよぉ?お姫様が望むなら…俺が今すぐにでもハーツラビュルに連れて行ったげる。
勿論、道中の危険な事からも ぜーんぶ俺が守ったげるよ?」
優しい言葉をつらつらと並べる。
「でも、ただじゃダメ〜。対価はきちんともらわないとねぇ」
『……何が、望みなの』
男の口元が、さらに怪しく弧を描く。
「…お姫様はさぁ、オレに 何をくれんの?」