第13章 絡みつく海のギャング
「意外と大きいな!」
『ほんとほんと!産まれたてのひよこって、私もっと湿っててベタベタしてるんだと思ってた!』
「〜〜っ、」お、もしろ
机の下で、足をばたつかせて面白がるフロイド。
彼が見たかったのはまさにこれだ。
自分の嘘でまんまと踊っている人間を見るのは面白くてたまらない。
無精卵で本当にひよこが孵ると信じて疑わない2人に、フロイドは満足だった。
次はどうしてやろうか。このままいけば、明日にでもひよこをニワトリにすり替えても騙せるに違いない。
彼は次の一手を、必死で模索した。
『ねぇねぇデュース、名前決めない?』
「そうだな!どんな名前にするか…」
『ピヨちゃんとか!』
「多分世界で一番多い鳥の名前だな!」
自分そっちのけで盛り上がり始めた2人。
「…………」
『ふふ。なんだかこうやって名前なんて決めてると、私がお母さんで、デュースがお父さんみたいね』
「えっ、///」
「………た」
小さな声で何かを呟いたフロイド。聞き取れなかった2人は、彼の方へ向き直る。
「『え?』」
「飽きた」
短く言い放った。
さきほどまでは、あんなに楽しかったのに。途端に興味を失ってしまったフロイド。
大切にしていた宝石が、ただの石ころだと気付いてしまったような。そんな感覚。