第13章 絡みつく海のギャング
フロイドは、森の中を疾走する。
ある 明確な目的を持って。
彼が目指しているのは、ここから一番近くにある農場。
彼の記憶が正しければ、その農場には養鶏場も併設されていたはずだ。
ただ駆ける。
鬱蒼と生い茂る木々の方が、まるで彼を避けているかのようなスピード感だ。
やがて 目的の場所が見えてくる。
フロイドは作業をしていた中年の男の肩を、後ろからガっと掴んだ。
「っひゃ!?」
声をかけてくるでも無く。突然背後に立つ、息を切らせた大男。
そんなフロイドに驚かない筈もなく。彼は情けない声を上げた。
しかし そんな事は御構い無しにフロイドは、自分の要求だけを簡潔に伝える。
「っはー…はー…っ、ひよこ、…」
「…へ?」ひよこ?
「ひよこ、っ…ちょーだい」
フロイドは、ある程度の金銭を男に渡して 2羽のひよこを手に入れたのだった。
自分の両手の平に乗った、その小さな生物をまじまじと見つめるフロイド。
「…アハ…よわそ」
それだけ言うと、彼はひよこをポケットにズボ!っと突っ込んで。
来た道を、また全速で帰って行くのだった。