第12章 貴女の心が欲しいスペード
露店の男は、デュースに商品であるネックレスを見せ付けるように それを揺らした。
「このネックレスはね…。なんと、
意中の人の、心が手に入るんだ」
「…心が、手に入る?」
デュースは、食い入るようにトップを見つめる。
「そう。このネックレスには、特別な魔法が施されていてね。
このネックレス身に付ければ、たちまちプレゼントしてくれた人を好きになってしまうんだ。
従って…お兄さんが、好きな人にこれをプレゼントして付けてあげれば…」
「彼女は…俺を好きになる…?」
そういう事。と男はニヤリと笑って答える。
デュースは咄嗟に、自分の所持金を頭に思い浮かべた。そしてほぼ無意識的に男に問う。
「ち、ちなみに…いくらですか、それ」
デュースがネックレスに食いついたのを確信すると、男の唇はまた弧を描くのだった。
そして……
現在に至る。
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「……お兄さーん。まだ腹は決まらないの?」
デュースは腕を組み、頭を捻る。
「…………」
彼は、迷っていた。
選択を迫られていた。
本当にローズの心を手に入れられるのなら、そんなに嬉しい事はない。
しかし、このやり方で自分を好きになってもらうのは…少し卑怯ではないだろうか。
これを買うよりも、正攻法で努力した方が…いやいや。使える手は何でも使った方が…
と、デュースは迷って…いるのではない!!
現在 彼はもっと、頭を悩ませている事がある。