第12章 貴女の心が欲しいスペード
そんな時だった。露店の男に話しかけられたのは。
「お兄さん、悩んでるねー」
「え、」
まさに自分が頭を悩ませていた。その事をあっさりと見抜かれてしまい、デュースはつい返事をしてしまう。
「僕が悩んでいる事、分かるんですか」
「分かる分かる!」
はたから見れば、まるで百面相の如く表情をころころと変えていた彼は…。
どこからどう見ても悩み事を抱えているのは明らかだった。
「もしかして貴方は…エスパーなんですか!」
「あはは。お兄さん面白いね!
じゃあもっと当ててみようか?お兄さんの悩み事は…
ズバリ!恋愛関係でしょ?」
「!エ、エスパーだ!!」ガーン
…デュースは、“ ド ” が付くほどの単純だった。
勿論この男はエスパーなどではない。ただ単に、年頃の青年の悩み事は だいたい恋愛関係と相場が決まっている。
そう考えてデュースに声をかけたに過ぎない。要するに ただのカンである。
さらに男は続ける。
「でもお兄さんは、運がいい!ここで俺と出会えたんだからね!」
「おぉ、心強い言葉だな!」
男の手のから、シャラリと現れたのはネックレス。
トップにクリアな宝石が付いている。装飾品に知識のないデュースには、それが宝石なのかガラスなのか、はたまた磨き上げられた石なのか。
全く見分けが付かなかった。
「それは…ネックレス、か?」
「その通り。だが勿論…ただのネックレスなんかじゃぁないよ?」
男の目と、ネックレストップがキラリと光った。