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眠り姫の物語【ツイステ】

第10章 なんでもない日のパーティ




「では諸君。なんでもない日のパーティを始めよう」

リドルがそう宣言すると、3人は彼に続いて 紅茶の入ったカップを目の高さまで持ち上げる。

いつもそうして、お茶会は始まるのだ。



「…俺達がローズとここへ来て、もう5年も経ったんだな。

そう考えると、なんだか感慨深いものがある」

トレイは、スコーンを美味しそうに頬張るローズを見つめて言った。

自分が作った物を幸せそうに食べる彼女に、ご満悦の様子だ。

『そうね…でもなんだか、すごく短く感じる。

皆んなと過ごす時間が 楽しかったからかしら』

ローズは、美しく辺りを彩る薔薇に視線をやって遠い目をした。

デュースは、自分が飾った薔薇をローズが眺めている姿を、眺めていた。

自分が彼女に見つめられているわけでもあるまいに、なんだか嬉しいと同時にこそばゆい心地になった。

「そうは言っても、やっぱり5年は長いと思うぞ…。

トレイ先輩なんか、この5年ですっかり菓子作りマスターですもんね」女子力満点になっちゃって

「はは。まぁ、性に合ってたんだろうな。菓子作りが」

デュースの言葉に、メガネの位置を指で直してトレイは笑った。

『ふふ。5年もあれば やっぱり皆んな、どこかしらは変わるのね』

「…そうだね。そう言うデュースだって、ボクは変わったと思うよ」

リドルは、ローズの指先につままれた苺を見ながら言った。

しかし。その小さくて愛らしい苺が、彼女の可憐な唇へ向かう途中で 思わず目を逸らしてしまう。

そんな仕草でいちいち顔が熱くなる自分が信じられない気持ちだった。

「僕も、ですか!?自分も少しは成長出来てるってことですかね!

どこですか それはっ、ぜひ教えて下さい!」

キラキラした瞳でリドルを見つめるデュース。

そんな彼に、リドルは淡々と告げる。

「薔薇を赤く塗るのを、面倒がらなくなっただろう」

「……リドル先輩、僕が薔薇塗り 面倒だって思ってたの…知ってたんですね」

デュースは、リドルにこの場で首をはねられるとでも思ったのだろうか。

恐怖に染まった顔で 少しだけ彼から距離を取るのだった。
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