第10章 なんでもない日のパーティ
ローズは早速中腰になり、カゴに赤い苺を選んで摘み取っている。そんな彼女にリドルは声をかける。
「…いつも君の方が、先に苺を見つけるね。何かコツでもあるのかい?」
『ん〜〜……コツって言うよりも、
私が苺が大好きだから、苺の方から呼んでるのかも?』私を食べてーって
ローズは、こんな事を言ったらリドルに馬鹿にされてしまうかもしれない。そう思ったのだが。
リドルは神妙な顔つきで俯いてしまった。そして、彼女には聞こえないくらいの声で呟いた。
「…大好きだから呼んでる…。か。
それなら 本当に君を呼んでいるのは、ボクのはずなんだけれどね」
『え?なに?』
リドルは ぱっと顔を上げた。
「いや、なんでもな…」
なんでもない。そう言おうと思ったが、ローズの顔を見てリドルはつい言葉を切る。
彼女の口元を見て固まってしまった。なぜなら…
「ローズ…っ、ボクの前でつまみ食いのような はしたない真似をするなんて!良い度胸がおありだね!」
『あ、バレた』
バレるに決まっている。彼女の口元は、しっかりと赤い果汁で汚れていたのだから。
リドルはわなわなと怒りで震える手で、ローズの頬を左右からぷにっと押した。
『ご、ごえんあはい、いおる』ごめんなさい、リドル
唇が変な形にされてしまっている為、上手く言葉が出てこない。
「いつも思っているけれど、君はもう少し王族としての立場を考えて行動した方がいい!
仮にもお姫様なんだ。そんなふうに自由奔放に」
その時、リドルの口の中に突如として苺が放り込まれた。勿論ローズが入れたのだ。
強制的にお説教は中断される。
「ん、、い、いきなりなにを///」
『ふふ、これで共犯ね』
ローズは、仕方なくそれを咀嚼するリドルに向かって微笑んだ。
「……はぁ。全く、君には敵わないよ」
リドルは、怒る気も失せてしまった。ローズの方を見る事なく苺摘みの作業に戻る。
『リドル、リドル!お、怒った?』ごめんね
「怒ってないよ///」
事実、彼は怒っていない。しかしその顔色はまだ赤いままだった。
それを彼女から隠すように黙々と手を動かした。
さきほど苺を口に入れられる際に、唇にローズの指が軽く触れただけで赤面してしまっている事を 必死で隠す為に。