第10章 なんでもない日のパーティ
「あ、待てフロイド」
そそくさと撤退しようとしていたフロイドを、フィリップは呼び止める。
「まだ何かあんのー?」
明らかに面倒くさいオーラを全開にしているフロイドに、フィリップは手短に本題に入る事にした。
「…お前、先週の休み…ずっと城にいなかったよな。
2日も…一体どこに行ってたんだよ」
「……ん〜?従者には、プライベートも認められないわけ?」
フロイドは、当然の如くはぐらかした。実際には彼は…
“ 彼女 ” に会いに森の家へ行っていた。
「そういうわけじゃねぇよ。…お前、分かってんだろ。俺が聞きたい事。
フロイドお前は…知ってるんじゃねえのか?
今、ローズがどこにいるのか」
キロリと、鋭い視線をフロイドに投げるフィリップ。
こんなにも明確な敵意を孕んだ瞳でさえも、フロイドは笑顔で簡単に躱す。
「どうして王子様は オレがお姫様のいる場所知ってると思うわけぇ?」
「5年前、お前だけがいなくなったからだよ。
アズールは親父とここにいた。ジェイドは俺と一緒だった。
お前だけが…あの時、ずっとフリーだった。つけてたんだろ。ローズ達の事」
「………」
大人になったフィリップは、当たり前だが子供の時よりも政治に口を出せるようになっていた。
彼がアズールの動きを牽制しているおかげもあって、アズールはローズを大々的に捜索出来なくなっているのだった。
フロイドはアズールの言葉を思い出していた。
フィリップはほぼ確実に自分達の目論見を掌握しているから、彼には警戒を怠るな と。
警戒を怠るな、とは言うが。こう面と向かって詰め寄られては、なんと答えるのが正解か分からない。
フロイドは、彼なりに返すべき正解の言葉を考えた。