第10章 なんでもない日のパーティ
考えに考え、フロイドは気が付いた。
自分がどれだけ考えを巡らせたところで、正解など出てくるはずもない。
そういうのは、アズールやジェイドの仕事なのだから。それなら、自分なりに誤魔化すしかない。
「…アハッ。秘密〜」
「は?」
「5年前の事も〜、先週の休暇の事も。ぜーんぶ秘密♪
オレってミステリアスだからさぁ」
あまりにも あっけらかんとするフロイドを見て、フィリップは毒気を抜かれる。
「…あほらし…。もういい。お前にはもう何も聞かねぇ」
「あ〜それ超助かるー」
「はは。お前ほんと、なんだそれ…。まぁいいわ。
仮に、お前がローズの居場所知ってるとしても…。アズールに報告してる様子がねぇからな。
その間は、泳がせてやるよ。お前の事」
「…オレ泳ぐの好き〜」
雰囲気が急に柔らかくなって、フロイドに笑いかけるフィリップの横顔を。彼はなんとなく見つめた。
「そうかよ。なんだかな…気が抜けたわ。お前はほんと…不思議な奴だよ。
だから俺は、なんとなく思うんだよな…
お前は、ローズの事を裏切ったりしねぇんじゃねぇかって」
「……はぁ…。王子様 お人好しすぎじゃね?
嫌になるくらい よく似てんだよなぁ2人は…」
フロイドは小さな声で呟いて、ようやく階段の中腹から歩き出すのだった。
自然とフィリップもそれを追い掛けて、2人並んで階段を上る構図となる。
「だからって、別にお前の事を信頼したわけじゃねぇから。
てか気を付けろよ?ローズに会いに行くお前の後を、アズール達がつけないとも限らねぇんだから」
「…アハッ、王子様〜?オレが本気で移動して、誰かが追い付けると思うの?」
フロイドの自信満々な顔を見て。フィリップは、はた と思い当たる。
「…そう言われれば、そうだな。フロイドがさっきのパルクールみたいに、トリッキーな動きで逃げたら 誰も…
あ!お前…まさかその為に城の中でもパルクール練習してんのか!」
フロイドは、ニヤリと笑って またあの言葉を口にする。
「秘密ひみつ。ぜ〜んぶ秘密〜」