第10章 なんでもない日のパーティ
「………」
彼の目の前には、煌びやかな赤い絨毯が敷かれた階段。
段数にして100くらいは軽く越しているだろう。そして階下に人がいない事を確認すると、彼は勢い良くその階段を駆け下り始めた。
大股で、飛ぶようにして階段を5段飛ばしで跳躍する。
そんなふうに降りると、あっという間に 既に半分の距離まで来ていた。
一際強く地面を蹴って、手摺りに捕まる。そしてそのまま手摺りの上を逆立ちで、なおかつスピーディに進む。
いよいよ視界に階下を捉える。
手摺りを強い力で突き放す。そして体を横捻りして3回転。
両足が同時に地面を捉える。
「…相変わらずお前のそれ、スゲェなフロイド」
100点満点の着地を決めたフロイドに、フィリップが声を掛ける。
「アハッ 褒められたらテンション上がる〜。
もっかいしよっと」
階段の途中に立つフィリップを通り過ぎ、駆け上がって行こうとするフロイド。
フィリップはそんな彼の腕を掴んだ。
「やめとけって!たまたま見つけたのが俺だったから良かったけどな。
親父に見つかってたら、またお前絞られんぞ」
「それは嫌〜…オレ絞るの専門だし」
「…だったら大人しくしとけ。大体な、城の中でパルクールやる従者なんか聞いた事ねぇ」
フィリップは、20歳になっていた。すっかり大人の仲間入りを果たした彼だったが、ふと同じ段に立ったフロイドの身長を目測する。
16歳のフロイドの身長は、190センチほどにもなっていた。
その長身と、自分の身長を比べる。どう見積もっても5センチ程足りていない。
「……」
「??王子様〜?どうかしたぁ?」
黙り込むフィリップに、フロイドが声をかけた。
「クソ!身長ばっかデカくなりやがって!お前いま身長いくつだよ!」
「んー、最近測ってないから分かんなぁい」
「腹立つ!その感じが腹立つ!あーあ俺まだ身長伸びんのかよ!」
「そんなの知らねぇって」ぼそ
「フロイド!その口の聞き方はやめろ!」
「……はぁい」めんどくせ
急に理不尽に八つ当たりされたフロイドは、一刻も早くこの場から立ち去りたいと思うのであった。