第8章 なんでもある日のパーティ
「…そうか。それならいいんだ。
まぁ一応、ネズミに塗る用のジャムは用意していたんだぞ?」
トレイが小瓶の蓋をカパっと開ける。
中には見るからに甘そうな 紫色のジャムがぎっしり詰まっていた。きっとブルーベリージャムだろう。
しかしローズには、美味しそうなジャムよりも もっと気にかかる事がある。
『ネズミに、ジャムを?……リドルはネズミを食べないって言ったのに。
でもわざわざ専用のジャムを用意しているってことは、やっぱり…』
ローズは、嘘つき。という視線をリドルの方に向けた。
「な、なんだいその目は。さっきも言った通りボク達はネズミなんて食べな」
リドルの言葉を遮って、トレイが満面の笑みでローズに言い放つ。
「はは。ローズはネズミを食べた事がないのか?
なら今度試してみるといい。結構イケるんだぞ」
『…っ、、』
「ト、トレイ先輩…」それは
「…」またトレイの悪趣味が始まった
リドルとデュースは、これがトレイの嘘だと瞬時に悟った。
しかし すぐに彼の冗談を否定する事はしなかった。もう少しだけ見ていたかったから。
ローズの、くるくると変わる表情を。
『そ…そんなに、美味しいの?』
「牛や豚よりも美味いな」
『…ジャムを塗るの?』
「たっぷりと塗って食べるのがマナーだぞ」
淡々と答えるトレイ。
よくもまぁ、こうもでまかせがスラスラ出て来るものだ。とリドルとデュースは舌を巻いて 事の成り行きを見守る。
『〜〜〜っぅ、わ、分かったわ!
そこまで言うなら、私も今度チャレンジしてみる。
これから皆んなと一緒に暮らしていくのだもの。皆んながいつも食べてる物とか、美味しいと思っているもの、そういうの共有したいと思うから…』
彼女なりの、一大決心だった。
しかし、トレイはそれを聞いて盛大に胸が痛んだ。
「……なんか…ごめんなさい」
『え?』
「「僕(ボク)達も、なんか ごめんなさい」」
突然3人が頭を下げる理由に、全く思い当たらないローズだった。