• テキストサイズ

眠り姫の物語【ツイステ】

第8章 なんでもある日のパーティ



「料理は出来るのか?」

『……………』

「よし分かった。じゃあここのクッキーを皿に並べてくれるか?」

カンの良いトレイは、彼女の沈黙から全てを察した。

一国の姫であるローズは、生まれてこのかた料理などした事はないのだ。

料理どころか、包丁を握った事もなかった。

『…ごめんなさい。お料理も、これから頑張って覚える』

しゅん、と俯き落ち込む彼女を見て トレイの胸は図らずしも、鼓動が早くなった。

長い睫毛が切なげに伏せ、その美しい唇からもれる吐息。そんな姿がとても儚げに見えて…。

これくらいの事でドキドキさせられてしまうなんて。自分は意外と簡単な男なのかもしれない。そう感じた。

『トレイ?怒ったの?怒ってるの?』

沈黙を貫くトレイを、恐る恐る見上げるローズ。

彼は慌てて否定した。

「いや、違う違う。悪いな、ちょっとぼーっとしてた」

まさか正直に、しおらしいローズを可愛く感じて見惚れていた。などと答えるわけにはいかず、そう答えた。

「それに、俺も別に凝った物は作らないぞ。

出来合いのクッキーに、フルーツ切ったり…あとはまぁ、作ってもサンドイッチくらいだな」

トレイは気を引き締めて、果物にナイフを入れる。

『……ふぅん、そうなの。でも、なんだかトレイ…』

「っ、!?」

トレイは思わず、手にしていたナイフを取りこぼしそうになる。

それもそのはず。隣に立っていたローズが、急に自分との距離を詰めて来たのだ。

すんすんと鼻を鳴らしながら、自分の首筋あたりの空気を吸い込む。

これにはさすがのトレイも面食らい、取り乱す。

「な、なにを、してるんだ?///一体」
/ 526ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp