第7章 真実の愛を見付ける為に
「…ふふっ。まさかフィリップ王子様、フロイドにヤキモチを?」
口元に手をやって、優雅に微笑むジェイド。
完全に躱されてしまった。
フィリップからすれば、わりと勇気を出して放った言葉だっただけに、
こんなふうにすんなりと、いなされてしまっては面白くなかった。
「バ、バカじゃねーのか!そんなわけ、あるわけねーだろ!
誰があんな、好奇心が服着て歩いてるような奴にヤキモチ焼くか!」
相変わらず飄々とした態度のジェイド。
フィリップは、この会話はこれで終わりになると予測したが。意外にもジェイドはまだ言葉を続ける。
「…そうですねぇ。でももしかすると、フロイドは…
フィリップ王子様の言う通り、お姫様の事を本気で好いているのかもしれません。
最悪の場合…
周りの人達全てを裏切って…彼女を攫い、2人で逃げてしまったりして…」
そう呟くように言ったジェイドの顔からは、さきほどまでの余裕の笑顔が消え失せていた。
「…なんだよ、それ。冗談だろ」
フィリップも、ついついジェイドの真剣味につられて。自分の顔がこわばるのを感じていた。
「おや。笑えませんでしたか?
貴方様ご所望の “ 腹がよじれるくらい面白い話 ” を披露したつもりだったのですが。
ふむ…。面白い話、というのは難しいものですね」
「……………」
フィリップは、あんぐりと口を開けたまま固まっている。
まさに開いた口が塞がらない状態だ。
「…俺、ほんと嫌いだわ。お前の事」はぁ
「おや、酷い事をおっしゃるのですね」
呆れ返るフィリップを横目に、また目を細めるジェイド。
「そこまでフロイドの事が気掛かりなら、お答えしておきましょうか」
「は?」
フィリップが飲み終えた、先ほどまで紅茶が入っていたカップ。
それをカチャカチャと片しながらフロイドは言う。
「…僕とフロイドは双子ですから。
分かるんですよ。彼の事なら、誰よりも。
断言しておきましょう。
フロイドが、他人を本気で愛す事など絶対にありえません」
情けない話だが、この時フィリップは本気で恐怖していた。
人をそんなふうにしてしまうくらい、今のジェイドは冷たい顔をしていたのだ。