第1章 プロローグ
「クルト!!お前の魔力は弱すぎるといつも言っているだろうが!!」
「へっへへ!ごめ~ん!」
おぉ…。今日も随分と声が出る。
さっきまでのジェラードからは想像もつかないほどだ。
大抵の者なら、今のジェラードに恐怖を感じて身動きが取れなくなるだろう。
しかしクルトはそんな彼を前にヘラヘラと笑う。
その姿がまた、ジェラードは気に食わないのだろう。
クルトが飛ばす花がジェラードにぶつかる度、彼の纏う黒いオーラがどんどん暗く、濃くなっていく。
「ふ……。くっ……あははは!」
もうだめだ。笑いを堪えきれない。
クルトが謝罪をすればするほど、ジェラードは不機嫌になっていく。
そんな状況を傍から見ていて面白くないわけがない。
ジェラードはクルトにかなわない。いつものことだ。
突然笑い出した私を見て二人は一瞬固まったが、クルトは満面の笑み、ジェラードは呆れたような顔になり、その場は収まった。
「でもさぁ、ステラちゃんもだいぶ明るくなったよね~」
おかずが一品欠けた食事中、クルトが私をまじまじと見つめた。
「ステラ」と呼ばれた女性。それが私だ。
さてさて。先ほどから気になることがあるのではないだろうか。
彼らが言う”魔力”とは何なのか。
彼ら。そして私は、何者なのか。
それを説明するには、少し時を遡る必要がある。