第4章 暮らし
なんでなんでと連呼するクルトさんなどまったく相手にせず歩き続け、私はまた、あの大きなベッドへと戻ってきた。
いや、戻された。
「詰めろ」
そういわれて咄嗟に片側に身を寄せる。
空いたほうへとジェラードが潜り込み、あんなに大きかったベッドはあっという間に狭くなった。
「落ちる」
少し苛立ったように彼がそう言うのでさっきよりも大きく体を移動させると背中側に布団の感覚がなくなった。
それと同時にふわりとした浮遊感があった。
「……!」
怖くなって目を瞑り、これから受ける衝撃に備えていたが浮遊感はあるもののいつまで経ってもそれはやって来ない。
不思議に思い目を開けると私をまっすぐ見つめるジェラードさんと目が合った。
彼の手が私に向かっている。
そして人差し指をクイと上に動かしたかと思えば、私の体はスーッとベッドの上に降り立った。
「えぇ!?」
何が何やらで声を出すと、うるさいと口元を塞がれた。
気づけば随分と顔が近い。
綺麗な顔が、目が、私をとらえて離さなっかった。
なんだか気まづくなってしまい離れようとすると、また落ちる気かと背中に手を回された。
「落ちるならこうしよう。仕方がない」
半ば抱きしめられる形となり、彼の声が頭上に響く。
息も、私の髪の毛にそっとかかるほどの距離だった。
「そんなにくっついて寝たいの~??」
「……!?」
ふいにクルトさんの声が聞こえ、私だけでなくジェラードさんもが飛び退いた。
見るとニヤニヤしながら私たちを見下ろすクルトさんの顔があった。
見ると枕を持っている。
「……なんだ」
はぁ。と大きなため息をつきながらジェラードさんが問うと、待ってましたとばかりにクルトさんが言った。
「僕も一緒に寝る!」
「はい!?」
枕を高々と掲げ宣言したクルトさんに思わず声が出る。
「で、でもこのベッド、私とジェラードさんだけでいっぱい……」
二人並んで入っただけでも肩が触れたのだ。私が思っていたよりはだいぶ狭かったのだろう。
そんなに狭いベッドに三人で寝るなんて、みんなが横向きになっても無理だろう。
私は床で寝るのは構わないが、落ちたくはない。
しかしクルトさんは私の言い分を最後まで聞くことなく首を横に振った。
「ステラちゃん。騙されてるよ」
「……え?」