• テキストサイズ

暁の契りと桃色の在り処 ー紅ー

第2章 その秘密


「記念日…ですね。」

あさひが、ゆっくり信長の髪を撫でながら、眼を輝かせて言った。

『記念日、とな?』

「人生の中で大切な日のことを、500年先ではそう言います。産まれた日や、運命の日、何かを始めた日…
そんな日を、記念日と言ってお祝いするんです。」

『運命の日か。ならば貴様がこの世に来て1年経つのも記念日か。』

「はい。あとは…夫婦となるための誓いを立てる日も記念日ですね。
女の子は、記念日が大好きで大切なんです。
お互いに贈り物をしたり1日を共にしたりして過ごします。これから先も一緒にいようって話ながら。」

『夫婦となるための誓い、か。500年先では何を贈り合う?』

「指輪とか…」

『指輪?』

「肌身につける装飾品です。首飾りや指に。」

『あぁ、南蛮の者が何やらしていたな。』

「でも、相手を想って選ぶ品なら何でもいいんです。
サプライズ、とかも楽しいですよ。」

『さ、ぷらい、ず、?』

「意中の相手に内緒にしながら宴や贈り物を考えて、相手を驚かせたり喜ばせたりすることです。」

『ほう、勉強になるな。1年の祝いに宴を、とは思っていた。参考にしよう。』

そう言うと、
信長はあさひの膝からガバッと起き上がり
天守から見える夕焼けを眺めた。

(さぷらいず、とやらであさひの記念日を祝うのも悪くない)


乱世には不釣り合いな穏やかな空気を纏い、
深紅の瞳が何かをはっきりと見定める。

そしてあさひもまた、
大切な記念日に愛する人へ
何か出来ないか考え始めていた。


お互いがお互いを想う。

運命が始まった日々を振り返り、共に歩んだ日々を祝おう。


『あさひ、来い。今宵も存分に愛でてやる。』

少し照れながら、にこりとあさひは笑う。


お互いに同じ未来を描き、
その為に少しだけ秘密を持とうとした。

その未来は1年後も、その次も、
永遠に続くのだから。













/ 76ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp