第16章 学生編・初秋のConcert
リハーサルの時とは違って音に優しさと甘さが無い。まるで我等に戦争を仕掛けてる様な激しく熱い音。勿論、各ユニットの曲にちゃんと合わせた音の出し方をしているが昨日みたいな協調する音は一切出さず"ついてこい"…否、"乗りこなしてみせろ"と言わんばかりの音。
「「っはぁ…疲れた…」」
「お帰り愛しき子達よ。どうじゃったか?」
トップバッターはfine。続いて流星隊、Ra*bitsと続き現在はMaMがパフォーマンスをし、入れ違いで舞台袖に戻って来た愛しき子達に声をかける。
「正直、昨日のリハは無意味になりますね…」
「ステージに出た瞬間に昨日とはまるで違うのが分かります」
「後ろからのプレッシャーが凄くて飲み込まれそうでした」
一分半から長くても三分。たった一曲の半分程度しかパフォーマンスしてないと言うのに皆のこの疲れ具合。全身全霊、一曲入魂。たった数分にからっきしになるまでの全力を出させる演奏。
しかもちゃんとユニットのレベルに合わせた"沈めない飲み込まない"のギリギリの荒波でユニットの最高レベルを引き出す。
「感服するよ」
「「?」」
「彼等のレベルの高さに」
※※※
三毛縞くんのパフォーマンスが終わってからNoGenderは直ぐに自分達の曲に入る。紫音くんはアコースティックギターを弾きながらメインボーカルを勤め時折、朱音くんがハモりを入れて空音さんがコーラスをする。
彼等…と言うよりNoGenderは紫音くんと朱音くんのトークも持ち味だと思うんだけど、どうやらトークを挟むつもりは無く更に熱量を上げて休まずに完走する目論見の様である。
「あ、ベースの人…えっと…朱音さまがベースを置いたよ!そろそろお筝!」
「は~い退いて退いて~!お筝さまが通りますよーっと」
桃李の言葉に先生達が慌ただしくお筝をステージまで運ぶ。
「ふふ、桃李は朱音くんのファンになった様だね」
「ファンって言うか…会長の先輩の池上さん?が朱音様朱音様って言ってるイメージが強過ぎて…」
…確かに。
彼もお筝を奏でるくらいだから由緒ある家の者だろうけど池上先輩も世界に通用する立派な御曹司。そんな池上先輩が様付けで呼んでるのは相当だと思う………けど。確か桜音さんの事も様付けで呼んでたな。
「会長?」