第14章 学生編・初秋のNoGender
生演奏の事を皆に言ってないとは何事だ、と突っ込みたくなる衝動を抑えてステージの上に上がって楽器の音を確認する様に鳴らせば視線が一気に集中する。
「今言った通り彼等にはゲストとしてだけでなく各ユニットの生演奏もしていただける事になった」
「生演奏してもらえるとか凄い!」
「だけど何故教えてくれなかったんですか?聞いていたらちゃんと練習を…」
「練習をしてどうこうなる問題じゃ無いんじゃよ。練習をしたところでいつもの音源…生演奏の練習にはならぬ」
「朔間先…くんの言う通り。これくらいの予定変更に対応出来ないようだとアイドルとして成り立たない」
今時のアイドルってそんな対応力も求められるなんて大変だなーと思いながら調律を終えて池ちゃんを見る。
「セトリはこの前もらった音源通りでいいのよね」
「はい」
「じゃあ皆には一度、流れを聞いてもらって…その後、合わせてみて調節が必要な所は調節をする。そして最初から最後までの通しを…三回くらいはしたいわね」
※※※
音はとても正直。この人達の音は雑音では無い。人間性が溢れ出たいい音。NoGenderの皆は強面だし俺は池上さんしか知らないけど、きっと皆、真っ直ぐな優しい人達なんだろう。
「素敵。いい音ね」
「だけど微妙なところでアレンジ加えてる…これ、一発で呼吸を合わせるの大変じゃない?」
エッちゃんが生演奏の依頼をしたのは一週間前。池上さんとドラムの人は社会人みたいだしボーカル(今はセカンドギター)、ベース、キーボードは学生っぽい話をライブの時に耳に挟んだから練習する時間は殆ど無かったハズなのに、この完成度はレベルが高い。
だけど紅月の曲になって楽器が和楽器に変わった時。
-ダララララララ-
一同「!!!」
全身に鳥肌が立つ程、お筝のレベル…つまりベーシストのハイレベル具合を思い知った………が。
-ビィン…-
『「「「!?!?!?」」」』
一同「?」
お筝の音がズレて演奏が止まる。
一同「…?」
『あ、わり。ミスった』
「えぇぇぇええ!?嘘でしょ!?朱音様がミス!?」
「ちょっと待って、一番初めに手探りで合わせた時から完璧だったよね!?」
「つーか今までミスした事ねぇアカネサンがミスだと…」
『え、アカネ体調悪い?』