第3章 学生編・終夏のOverture
八月もお盆を過ぎて後半に差し掛かった頃。
ここ、夢ノ咲学院では次なる新たな行事の提案が持ち込まれていた。一般的な学校は夏休み真っ只中であるだろうが此処ではそれはあまり関係が無い。
「へえ…学年、クラス対抗以外にユニット対抗か…」
提出された資料を見ながら呟くのは物腰が柔らかそうな…まるで王子様の様な風貌をした人。
「面白そうだけど…もう少し盛り上がりの起爆剤が欲しいところかな」
「えと…でしたらゲストをお呼びする、とかどうでしょうか?」
控えめに意見を発するのはこの学院学科唯一の女子生徒。今春から設立されたプロデュース科に属しており、既にこの数ヶ月でそれなりのプロデュース力を発揮し身に付けて来ている有望な女の子。
「ゲストを呼ぶとなると金銭的な問題が出てしまうかもしれませんが…」
「成程、ゲストか…良いんじゃ無いかな?面白そうだ」
「え!?あっ…でも誰をゲストとして呼ぶか…」
「そこは僕に一任してもらえないかな?良いアテが有るんだ。きっと皆にとっても良い刺激になる」
爽やかな笑顔を浮かべてそう言うと机の端に置いてある携帯に手を伸ばすと何処かに電話をかける。
「やあ久しぶり。僕だよ。ちょっと頼まれてくれないかな?」
※※※
-ずこーっ-
と空になったコップの中身を更に吸い続けながら、カラッと涼しいハズなのにジメジメした室内を見渡す。
時折、指でリズムを刻みながらカリカリと五線譜の上に音符を書く頭のおかしい同級生。気怠そうにドラムのステックを磨く同じ高校の一学年上に居た超強面の先輩。
-ガチャ-
携帯を弄りながら部屋に入って来たのは私の愛する親友のバイト先のオーナーであるオカマ。そしてそんな様子を傍観する私はヤンデレメンヘラの二拍子が揃った通称ヤンヘラ。
『電話、誰だったの?』
「ちょっと古い知人よ。ワタシ達にオファーしたいんだって」
『へー…』
私達にオファーねぇ…私達にオファーとか絶対ヤバいよね、オカマの知人。確かに最近、動画サイトを賑わしたりで、そこそこ名は知れてるだろうけど…あくまで一般人の趣味の集まりだしメディア露出なんてしてないし余程のコアな………
-ガタッ-
『「「オファー!?」」』
協調性の欠片も無い三人の声が見事に重なる。