第13章 学生編・初秋のBurlesque
ジャカジャカと三味線…否、三線か。それを掻き鳴らす椎名は珍しく上手く行ってない様子で少し奏でては苛立たしそうに頭を掻きむしり、また少し奏でては妖怪の様な呻き声を上げる。
「君がそんななのは珍しいじゃないか」
「おぉ…まぁね…」
心無しか声に元気も無い。現時刻は21時。場所はいつものライブハウスIKE。箱自体は既にCLOSE時間だしスタッフも帰ってるが、一人残ってひらすら三線を奏でる。
「そう言えば体育祭のライブ、Valkyrieも出るんだな」
「まぁ仕方無しだよ」
「俺達、ただゲストとして参加するだけじゃなくて生演奏も頼まれてんだけどさ」
「「!?」」
それは初耳。しかし確かに三線で奏でてる曲は何処か紅月っぽいものがある。
「斎宮達の曲は聞き慣れてるから簡単なんだけど…この紅月の曲がな…」
"簡単に和楽器組み込むなんて言わなきゃ良かった"と盛大に溜息を吐いて、また三線を掻き鳴らす。
「そう言えば池上先輩と桜音の姿が見えないね」
「あぁ…姫さんはテスト期間中だしな。和音さんはアカネさんの実家にお筝取りに行ってる」
お筝。あの蛮カラなベースはお筝なんて言う日本の美しい楽器が弾けると言うのか。しかも実家って…お筝があるだけでも由緒ある家柄と言うイメージなんだが…彼からは全く想像も付かない。
※※※
「はぁ…寿命が十年は縮んだわね…未だに心臓がバクバク言ってる…」
自家用ジェット機の中でリクライニングを限界まで倒して脱力する池ちゃんは胃を抑えながら顔を青くする。
『アタシ一人で良いって言ったのに』
「そんな訳にはいかないわよ。保護者的なのが居ないと実家の方も安心しないし連れ戻されちゃうでしょ」
『まぁ…成績良いから今のところそれは無いと思うけど』
アタシの実家、と言うより母の実家。戻ったのは…小学生以来だけど。
「ところで…それ。勝手に持って来て良かったの?バレたら大目玉食らうんじゃない?」
と池ちゃんが指すのは反物の山。実家の倉庫からこっそりと拝借(と言う名の強奪)をしたのである。
『和楽器演奏するのにいつものライブ衣装じゃ違和感あるでしょ。ちょっとくらい和装っぽいもの取り入れようと思って』
「衣装デザインは?」