第12章 学生編・初秋のImpromptu
ウチの姫様は基本的に時間厳守…と言うよりは大体三十分前には準備を整えて待機してる様な、とても時間に厳しい子なんだけども。
そうなんだけども。現在は土曜日の13時。天祥院からの話し合いの席を設ける事を頼まれて設置したはいいけど、会議開始時刻は13時。もうその時間になってしまった。
「やだわぁ…どうしたのかしら…何かあったのかしら…」
「落ち着いて下さい池上先輩。時間はありますから」
と宥める後輩を見て"あぁ、成長したな"としみじみ感じていると応接室の扉が荒々しく開かれる。
『あ、やっぱり』
「実菜未…!どうして此処に」
『あっ…と…』
ちらりと夢ノ咲学院の生徒を見て口篭る。
『紫音から今日、会議するって話聞いたんだけどさ、池上さん貴方ちゃんと姫に日程の確認した?』
「………」
そう言えば。姫様はいつも土日は朝から此処に居るし、テスト期間中だから邪魔したら悪いと思って………ここ数日…連絡入れてなかった、気が…す、る…
『やっぱりね。姫、今日部活で他校と親善試合だよ』
「えっ」
『でも昼で終わりだから今急いで向かってるって』
「御免皆…ワタシに不手際があったみたい」
一同「お構いなく」
※※※
それから程なくして。マネージャーさんの到着をティータイムで優雅に待っていた時だった。
-がちゃ-
一同「!」
「やーん!待ってたわよ姫さ…んま゙!?」
池上先輩の顔面に無言無表情でヘルメットを投げ付けてソファに座る前に僕達に頭を下げる。
『申し訳ありません。少々こちら側で不手際がありました様で聞き及んでおらず遅れてしまいました』
そう言って律儀に頭を下げた後に席に着く彼女は真っ黒なライダースーツに真っ黒なライダースジャケット。格好と池上先輩に投げ付けたヘルメットから見るに割と大型のバイクを乗りこなす類い…みたいだけど。あのエリート校は校則も厳しいと聞くし立派な校則違反なのでは。
『…で、あの…大変恐縮なのですが本日のお話とは一体どの様なご要件で?一時間程前に会議の事をプロデューサーから聞いただけで恥ずかしながら何も知らなくて…』
「あ、それわ゙っ!?」
ひらりと背後にやってきた池上先輩に裏拳。