第10章 学生編・初秋のIntroduction
新学期早々の授業と言うものは何故こんなにも気怠いのか。長期の休み明けで呆けているのか…否、それは無い。仕事もあったしそれなりに学院にいる事は多かった。
しかし新学期早々から動く気にはなれず部活も休みだし今日は学院にダラダラと残らず真っ直ぐ家に帰る事にした。
-ミーンミーン…-
「蝉はまだまだ元気じゃのぅ」
暦の上では今日から秋。だが秋の様な涼しさは無く大地を焦がす太陽は眩しく、暑い外は灼熱の地獄。このままでは灰や塵になるのも時間の問題。
「何処か涼める場所…」
ふと目に止まるのは図書館。駐輪場に停まっていたやんちゃな単車が目に入った。
「一体どんなやんちゃ小僧が涼んでおるのやら」
※※※
-カリカリ…カッ-
『………、』
一体どうして。こんな事になっているんだろう。
普通に始業式を終えた後に当然の様にテストを受けて…テスト期間中は午前授業だけど家に帰ったら勉強出来ないから図書館の中庭でお弁当を食べて明日のテスト勉強してるだけなのに。
「すー…」
-ボキッ-
アタシの膝を枕にして眠る得体の知れない生物に集中力を乱されてシャーペンの芯が折れる。
この得体の知れない生物を助けたのが間違いだったのだろうか。いやでも中庭で死にかけてたから放っておく事は出来ないよね。死んだら大問題だし死にかけを放置して死んだってなると夢見が悪いし。一応、全く知らない人でも無い…し。
※※※
中は意外と広く中庭なんかもある老舗の図書館。人もパラパラと居るが、主に初老から老人の人達がメインで、その中に未だ夏休み真っ只中の大学生らしき人達がチラッと居る程度。あのやんちゃな単車の乗り主らしきやんちゃな小僧は見たところ存在しない。
「にしても…涼しいわぃ」
生き返った心地がする。何か飲み物でも買おうと自販機を探してぐるりと周りを見渡した時だった。ふと一箇所に目が止まる。
「なんと言う本の量…相当なガリ勉…」
広いソファ席を一人で陣取り、広い机に沢山積まれた本。今どきの子にしては珍しくピンと伸びた姿勢はそれだけで品すら感じる。と言うよりもあの制服…あの子は…
「随分と勉強熱心じゃな、マネージャー殿」
『!』
と後ろから声を掛けてみれば見上げる様に振り向く。