第8章 学生編・終夏のNoGender
"今日の自己紹介ネタはねー"と客席をぐるりと見渡す紫音を横目で見る。
大体いつもNoGenderのライブは初っ端から演奏を飛ばして中盤に(休憩と言う名の)自己紹介コーナーとゲームコーナーをして終盤はラストまで突っ走る。アンコールはしないのが定番…って言うより皆突っ走り過ぎてそんな体力は残って無いのがいつものオチ。
ただお客様も常連ばかりだからそれを分かっててアンコールはしない。
「それじゃあ今日のネタは最近のマイブーム!んじゃクオンからどうぞー」
そう言うと池ちゃんは少しだけギターを鳴らした後にライブ中いつも身近に置いてあるホワイトボードを手に取ってペンを滑らせる。
「なになに…苛められる事?あー…誰にとは聞かないけど変態なマイブームだなオイ。じゃあ次はレント」
ゴトちゃんも激しくドラムを叩いた後に紫音が差し出したマイクに向かって喋る。
「最近のマイブームねぇ…うーん…ま、筋トレだな」
そんなの見れば分かる。強面のくせにここで真面目出してどうするんだ。
※※※
「筋トレとか見たまんま分かりきった事じゃん。はい、つまんないから次ーアイネ」
名前を呼ばれたキーボードは端から端まで綺麗に鍵盤を奏でるとベースにピッタリと寄り添う。
『ウチのマイブームはぁ、やっぱりぃ…アカネと居る事!過去も現在もこの先の未来もずーっと!だからぁ』
そしてベースのスタンドマイクを掴むと声を荒らげる。
『そこの雌猫もそこの雄猿も!!!アカネに変な色目使わないでよね!』
「「「アカアイ最高ーっ!」」」
と見せ付ける様にベースの首に腕を巻き付けるとマスク越しに口付ける。あんなにファンを捲し立てる様な事を言ってるのにファンは大歓喜。成程…この二人はファン公認のカップルと言うわけか。しかし…
「本当お前アカネ馬鹿だよな」
「まぁねん」
「じゃ、我等がアカネ様ヨロシク」
-ベンべべべベンッ-
これまでの流れ通りベースも音を鳴らす。
『つか、紫音。お前言い出しっぺなんだから答えろよ』
「あ、そう来る!?」
二人のやり取りに会場が笑いに包まれる。
「まぁそうだなー…僕のマイブームはケーキで食い漁るのが楽しいんだよねぇ。そのせいでほら、腹きん゙っ!?」