第30章 学生編・中秋のVirtuoso
助け…助けて貰うって何したんだろ?また何かあの時みたいな喧嘩でもしたんだろうか。
『ウチの学校の敷地内に迷い込んでてね』
「崖に吊るされてたところを助けて貰った!わはは!」
一同「崖ぇ!?」
『何をどうしたらあんな展開になるのやら』
呆れた様に言う姫ちゃんに王さまはいつもの様に"お前ほんと面白いな!大好きだ"みたいな発言を飛ばすけど、姫ちゃんは"どーも"と素っ気無く答える。
「お言葉ですがReader、女性に対してその様な発言を軽々しくなさるのは如何なものかと」
「俺も姫ちゃん好きだよ?いい匂いするし大きいし程良い弾力が「凛月ちゃんそれセクハラよ!」え?」
『はは…凛月君って悪意感じ無いから殴れないんだよねぇ』
普通の人だったらボコボコにしてるのに、と笑顔で言うから余計におっかない。この子多分普通じゃないもんな…喧嘩強い女の子なんて初めて見る人種だし。
※※※
「ほら朔間先輩!寝惚けてないで早く~」
「多分セット終わってないの朔間先輩だけですよ」
寝起きの気怠い身体を愛し子達に引き摺られる様に引っ張られてステージの舞台裏に行けばパイプ椅子に腰掛けて脚と腕を組みながら携帯を弄る智桜姫ちゃんが居た。
「姫さ~ん!」
「最後の一人連れて来ましたよ~」
『随分と遅い出勤ですね、零さん』
「一応ちゃんと朝から出勤しておったんじゃがのぅ…」
智桜姫ちゃんが立ち上がったパイプ椅子に双子から促されて座れば腰に携えたポーチから髪の毛を留めるクリップを引き抜くと数本、我輩の髪の毛にさす。
『吸血鬼だから日中は寝てた、ですか?』
難儀な体質ですね、と小さく笑いながら化粧水を染み込ませたコットンで肌を整えると手の甲で下地と液状の白粉を混ぜ合わせる。
『無論、仮装も吸血鬼ですか…口とか裂けさせた特殊メイクとかします?』
「我輩アイドルじゃから。スプラッタなのは勘弁しておくれ」
『結局、九割は可愛いか綺麗な化粧でアタシ必要無かったと思うんですよね』
と満足しない様子で不服そうに呟いた。
→To Be Continued.